現場監督との交友録
私の生まれ故郷は東京から新幹線で一本で
来れる立地で、ホテル旅館が衰退して行く
なか、リゾートマンション建設が目立って来た。
自分の行きつけの居酒屋にも建設関係の人が
よく来ていた。
その中でも気があった現場監督がいた。
当時は連日連夜飲み、朝までどんちゃん騒ぎを
して、そのあとファミレスで飲むのが定番だった。
現場監督も居酒屋で飲んで、行きつけの
スナックに行く日々が続き、地元ではなかったが、夜の住人達と交友を深めていった。
よっぽど私の地元を気に入ったのか、会社を
辞めて、なんと居酒屋を開店してしまった。
開店して自分も地元の夜の住人達もお祝いがてら飲みに行った。
嬉しそうにカウンターで仕事をしていて
奥さん直伝のチヂミなどを振る舞ってくれた。
だが、ある時から店に行くとテーブルに
「ご用の方は、連絡下さい」と言う置き手紙
があるようになり、足が遠のいていった。
店の看板をつけ、カギも開けっ放しで、店に居ない事が増えていった。
私もなんとなく分かっていたが、その元現場監督はスナックに飲みに行っていた。
その頃から、奥さん直伝のチヂミがなくなり、
代わりにスーパーの半額や30%OFFになった
惣菜が出るようになった。
ある時は店に行くと、カウンターで焼酎の
ペットボトルを飲んで、ヘベレケになっていた。
ここの店でカラオケを歌うと隣の住人が
警察をすぐに呼び、それこそ毎晩通報されてる
勢いだった。
飲んでると警察が申し訳なさそうな顔で、
しょっちゅう元現場監督の店にたずねてきた。
そうした、ストレスと元々の酒飲みの性分が
重なり開店から半年もしない内に店をたたんで
しまった。
酒飲みの人間が店をやると、自由に酒を
飲める環境になるから、破滅して行くケースが多い。
創業40年を超えるスナックのマスターに
店を長く続ける秘訣を聞いたら、
「酒に飲まれない事」その一言だけだった。
現場監督が店をたたみ10年以上の歳月が
たつが今何をしてるかと、ふと思いだす。
お酒は楽しい時間を作ってくれるが、
間違えると色んなものを失なってしまう。
私も色々と失ってきた。
これからはお酒のない人生をおくり、
謙虚に生きて行きたいと思う今日この頃であります。