パトロンの正体
私の地元にはホテル旅館が数多くあり、
衣食住が整っている職場が多数あった。
その為、カバン1つで流れ着いてくる訳ありの人もいた。
夜の街も地元出身者ではない人が店をやる事も珍しくはなかった。
そんな地元で10数年程前にYさんと言う、
長年水商売をやってる人と出会った。
このYさんも地元出身者ではなく流れ着いた
1人だった。
私より10才以上年上のYさんの出で立ちは
ロックンロールといった感じで、耳はピアス
だらけだった。
その明るいキャラクターとよく飲むYさんは
夜の住人達からも人気だった。
私の地元のスナックで雇われマスターや
ホストクラブで働いていたが、所詮は地方の
温泉街であまり稼げる町ではなかった。
一時は仕事が無くなりホテルにアルバイトに
行っていたが、お酒が大好きなYさんは
また、夜の街に戻っていた。
このYさんもお酒を飲むと目が座り飲まれる
タイプの人で、一度Yさんの働いてる店に
飲みに行った時に、いきなり殴ってきて
ケンカになった事があった。
でも、普段は至って普通の人だった。
夜の街に戻ったYさんは持ち前のキャラクターで夜の街で頑張っていたが、風の噂で給料も
安くジリ貧だったらしい。
着てるスーツにも穴が開いていた。
ところがある時を境に高そうなダブルのスーツに、プラチナの喜平のネックレスに、ブランドのカバンと、いきなり羽振りが良くなった。
夜の街ではYにパトロンが出来たとか、金持ちのおばさんがお客になったとか、Yさんの話で持ち切りになっていた。
実際に年上の女性を連れて歩くようになった
Yさんは生活が派手になっていた。
その年上のおばさんがYさんの勤めていた、
店の下にあるラブホテルで仮眠をとっていて
決められた時間に起こしに行くだけで、
1万円からのお小遣いをもらえるとYさんは
豪語していた。
しかし、そんな生活も長くは続くはずはなかった。
夜の街では、そのパトロンのおばさんが
寿司屋のホールスタッフなのに、どっから
そんなお金が湧いてくるのか話題になっていた。
そして、Yさんのパトロンは警察に逮捕されてしまった。
Yさんに貢いでいたお金は全て店の売り上げを横領したものだった。
Yさんも元のジリ貧ホストに戻ってしまったが
そっちの方が人間臭くで好きだった。
世の中に上手い話などあるわけない。
地に足をつけてコツコツと生きていかなければならない。
そう思わしてくれる出来事だった。